旅の一コマ、初めてのインド第一回目。
2001年。
日本からインドに向かう途中、台北でストップオーバーした時は乗客の入れ替えがあったにもかかわらず、不安過ぎてキャビンアテンダントさんに頼んで機内で数時間待たせてもらった。
香港では海外初の夜をさまよい歩いた挙句に野宿して過ごし、やっとの思いで21歳の私はインドに辿り着いた。
インドに到着する前に、もう既にそんな情けなさ全開だった。
インド着いてからも色々あった。ほんとに。
正直苦い記憶なのであんまり細かく思い返すとしんどいんだけど、旅でかいた恥がせめて誰かの笑いもしくは参考になってもらえればいいかと。
という訳でインドでの出来事を旅の一コマとしてのらり書き連ねていきます。
インドに行った目的は、別に価値観を変えたかったとか自分を探しにとかではなく、ただ単に大学の授業で知ったエローラ石窟寺院という遺跡に自分の足で訪れてみたかったから。
テレビとかでキレイな景色の場所とか紹介されてても、それまでは「へーすごいな」ぐらいにしか思ってなかったけど、エローラの映像を見た時は「なんとか生でこの遺跡を見てみたい!」と思った。
香港を離陸したキャセイパシフィックの飛行機はインドのデリーに着陸した。到着したのは確か未明の4時頃。
ついに来てしまった・・・。インドへ。ドキドキ。ガクガク。
運のいいことに、同じ機内にたまたま日本人の男性が乗っていて、その男性はインドは数回訪れているようでインド初めてで緊張してる私を心配してバスに乗るまで一緒に待ってくれる事になった。
その男性はすぐ国内線に乗って別に地域に行く予定だったけど、その国内線の便まで時間あったらしく。
何はともあれ、入国したらまずは両替だ。
当時はまだ国際キャッシュカードなんて無い時代。
お金はUSドルを現地で両替するかトラベラーズチェックで持って行って現金化するかクレジットカード決済するかのほぼ3パターンしかなかった。
え?トラベラーズチェックなんて知らない?
あらそうですか。でもだいじょぶです、知らなくて。今の時代で使う機会なんてもう無いんで。
それでも一応簡単に説明すると、まぁ小切手のようなものと考えるとわかりやすい。
任意の金額で発行しておいて、現地の銀行で現金化してもらうって感じの。
手数料もかかるし、現在ではまず現地の銀行が取り扱ってくれないので、もうすっかり過去の遺物と化してしまった。
前置きが長くなったけど、我々二人は両替の窓口へ。
まず日本人男性のお兄さんがやって、自分の番。
私は持ってたUSドルを係員に渡した。
そしてしばし待つ。
・・・結構待つぞ。
・・・まだ両替終わらないぞ。
お兄さんも時間かかってるねみたいな感じで待ってくれている。
あ、両替が終わったかな?
ドンッ!
・・・札束!!
ティッシュの箱ぐらいの高さがある札束が!
俺はもちろんお兄さんも「ええっ!?」ってビックリ。
そして、「もしかして持ってたドルを全部両替したの!?」と訊かれた。
そこで初めて旅先では基本的にはUSドルのまま所持しておいて、必要な分をその都度現地通貨に両替して使用するものだと知った。
窓口のインド人も苦笑いしながら「You’re rich man.」と皮肉を言ってくる始末。
いやでもだってあのボクこういうの初めてだから知らなかったんだもの。
普通バックパッカーはマネーベルトという貴重品を入れる薄いバッグを腰にまくか首から下げるかしてるのだけど、分厚過ぎてマネーベルトに収まらん。
強引にねじ込んでもヘソの辺りだけぼっこり膨らんでて何かが隠されてるのモロバレで隠してる意味無し。
このインドルピーの札束を落とすか失くすか盗られるかしたら、所持金が完全に0になり、もうどうにもならない。
ぐあああーいきなりやってしまったー!
しかもたぶんだけど窓口の係員の奴何枚かお札抜いてるわー。(←根拠の無い言いがかり)
とは言っても両替したUSドルは8万円分ほどなので、日本で考えたら言うほど大金ではない。一ヶ月半だけの予定だったし。帰りの航空券はあるし。
でもここはインドだ。
大の大人が朝から晩まで一日中肉体労働しても、日本で高校生が一時間バイトする金額と大差ない国だ。
まぁ、もうやってしまったものはしょうがない。
このままこのインドルピーの札束を死守しながら旅を続けるしかない。
ちなみに、インドのお札はもう日本では考えられないほどボロボロで小汚く、100枚束はホッチキスみたいなのでバスッと穴開けてまとめられていた。なのでどのお札も穴だらけ。
それにもビックリ。お札にまるでメモの代わりかのようにペンで数字が書かれているのも当たり前。
まだ明け方だったので、お兄さんと私はロビーのベンチに座ってあれこれ話しながら朝を待った。
朝になり、お兄さんは市内まで行くバスを探してくれた。
さらに親切にもドライバーに「彼メインバザールまで行きたいからそこでおろしてやってくれ」と英語で伝えてくれて、国内線ターミナルへと姿を消した。
ありがとう、名前もう忘れたけど親切なお兄さん。
お兄さんが探してくれたバスに乗り込み座席に座ってると続々インド人が乗り込んできて満員の状態に。
メインバザールというのはデリーにある安宿街。
たいていのバックパッカー達はここの安宿に泊まる。
地球の歩き方って超有名なガイドブックには治安上の注意なんかも書かれてる。
例えば、空港から市内まで行く途中で悪徳タクシーにつかまってトラブルになる体験談とか。
それが自分の身に起こるのをとても心配してたんだけど、親切なお兄さんのおかげで市内まで行くバスに乗れて、「あ~良かった、これで安心だ。」と心の底から安堵した。
・・・が。安堵するのはまだまだまだまだ早過ぎた。
バスがしばらく走った後、切符担当のインド人から「ここだ、降りろ」みたいなジェスチャーをされた。
普通に「あ、もうメインバザール着いたんだ」と思いバスから降りた。
降りた場所で辺りを見渡すと、そこは何の変哲も無い普通の町はずれの交差点。
とてもじゃないけど安宿が集まる賑わいのある場所じゃない。
僕は世界の中心で「どこだここは!」と叫ぶ。
そこでは、インドの洗礼が大きな口を開けて私を待ち受けていた。
・・・次回へつづく。
旅の一コマ <香港で野宿②>
旅の一コマ <バックパッカー旅のきっかけ>
旅の一コマ <バラナシの物乞いとSIMカード>
旅写真ギャラリー <波打ち際でのウンコ>
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