以前、ボルネオ/カリマンタン島の東端にある国境をフェリーで渡ることになり、その後大型船でインドネシアを南下する記事を書きました。
今回はその続編です。
簡単にこれまでのあらすじをまとめると。

ボルネオマレーシアのコタキナバルで、インドネシア語を話せる日本人女性と会い、そのまま流れで行く予定の無かったタワウ→タラカンというマイナーな国境を小さなフェリーで渡りインドネシアにやってきた俺。
日本人女性はすぐに飛行機でバリへと飛んで行ってしまった。インドネシア語なんて話せないのに英語もほとんど通じないこんなへんぴな土地に一人残された俺。
でも親切なオカマに助けられ、テングザルを見る事ができ、なぜか誰か知らない人の結婚式にも参加し、大型船で移動することになった俺。
大型船は日本の感覚で言えばかなり劣悪な環境で、クソ暑く不衛生で、でもたくさんの良いインドネシア人達に出会い、挨拶程度のインドネシア語を覚えてとても楽しく過ごした。

マレーシア(タワウ)からインドネシア(タラカン)へ国境越え その1<ビザ取得>
マレーシア(タワウ)からインドネシア(タラカン)へ国境越え その2<オカマとテングザルに会う>
マレーシア(タワウ)からインドネシア(タラカン)へ国境越え その3<誰かの結婚式>
インドネシアで船旅 その1<うっかりインドネシア語を学ぶ>
インドネシアで船旅 その2<船の中で会った人達>


・・・という感じ。
ここからは、大型船を降りてからのお話。あれは2010年だったからもう10年ぐらい前なのに、今でもあの一晩の事はかなり鮮明に覚えてる。


バリパパンという街の港に降り立った時は夕方で、既に暗くなりかけていた。
人はたくさんいたが、どこに行けばいいかはわからない。この時私は何も情報が無かった。
事前にネットで宿を予約しておいたり、マップアプリで自分の現在地と目的地まの経路がわかったり、配車アプリでタクシーに乗ったり、というような現代の旅の仕方に慣れると空恐ろしい事だが、当時はそんなの普通だった。

とりあえず街の中心部に行って宿を探そうと思ってウロウロしていると、運良くインドネシア人男性がバイクで街まで乗っけていってくれると言う。助かるー。
ありがたく後ろに乗っけてもらい20分ぐらい走ったあたりの国道沿い的な道端で降ろされ、お礼を言って別れた。
もうすっかり暗くなっていた。私はあてもなく歩き始めた。

しばらく国道沿いっぽい道路に沿って歩いていると、ソバ屋の出前に使われていそうなカブに乗ったおっさんが止まって声をかけてきた。
でもインドネシア語だったし、後ろに乗っていいぞみたいな事言ってるようだけど荷台にソバ屋の出前用みたいな器具乗ってて座れないし、ノーサンキューして断った。

おっさんが走り去った後、ひと気がありそうな方に歩いた。ただひたすら歩いた。安宿の手がかりは無い。地図も無い。自分の勘だけが頼り。

やっと一つゲストハウスっぽいところを見つけた。
中に入ると、レセプションらしきカウンターの中で太った若者が横になって寝ている。
起こして一晩いくらか訊こうとしたが会話にならないし、向こうは寝起きでめちゃ不愛想で、むしろ顔見てるだけで嫌悪感が湧くタイプだった。
建物の雰囲気を見てもとても防犯面で安心できそうではない。
ここはやめた方がいいなと思い外へでた。
また歩いた。腹減った。けど歩いた。時間だけが過ぎていく。疲れた。けど歩いた。

ふと地面に2000ルピア札が落ちてるのを見つけた。
インドネシア人に限らず、アジアでは財布を持ってない人が多い。富裕層は持ってるだろうけど、庶民は結構お金をそのままポケットなどに入れておくだけだったりする。
きっと誰かポケットから2000ルピア札を気づかず落としてしまったのだろう。
私は拾わずに通り過ぎた。どうせ日本円で20円だし。それは俺じゃない誰かが拾えばいい。

しかし宿は見つからない。バリとかだったら値段はともかく簡単に宿は見つかるんだろうがここではそれはムリだ。
深夜2時頃になって、さすがに歩き疲れてしんどいと思っていると、またしてもバイクが一台近くで止まり声をかけられた。
それは先ほども声をかけてきたソバ屋の出前みたいなカブに乗ったおっさんだった。
友達に偶然会ったような気分になり、「おおーハロー」みたいな感じで返した。

おっさんはカブからおりてきて、我々はその辺の適当な段差に腰をおろした。
向こうはインドネシア語で話してくる。おそらく「あれからずっと歩いているのか、大丈夫か?」とか言っているのだろう。
私のふくらはぎをマッサージするかのように揉んでくるからきっとそうだ。
まぁ一応訊いてみるかと思い、おっさんに「ドー ユー ノウ ゲストハウス アラウンド ヒア?」とゆっくり英語でこの辺に宿はあるかと尋ねてみた。
するとおっさんは、一瞬表情を変え、「イエス、アイ ゲイ」と答えた。
と同時に、ふくらはぎを揉んでた手がするすると太ももに移動した・・・!

うおおおおおーコイツ「ゲストハウス」の「ゲ」だけ拾ってきやがった!んなこた聞いてねええーー!
そんで俺狙われてんじゃんか!これはヤバい!

慌てて、「オッケー、サンキュー」と言って立ち上がりその場を去ろうとした。
バックパックを背負いながら1歩踏み出した瞬間、おっさんの手は私のお尻の付け根あたりを後ろから一瞬揉んだ。
ゾゾゾゾゾゾゾ!と寒気というか悪寒が全身を駆け巡り、早歩きで逃げた。
あー気色悪かったー。きっと痴漢される女性はこういう感覚を味わうんだろうなぁ。いや、男がこれぐらいなんだから、女性はもっとヒドイ気色悪さと恐怖を味わうことになるんだろう。
なるほど、痴漢は間違いなく罪だ。痴漢行為なんて、ダメ、ゼッタイ。

さらに歩いて夜がしらんできた頃、今度はウンコしたくなった。
ヤバい。おしっこは物陰に隠れてしたけど、ウンコはヤバい。
こんなところにコンビニなど無い。日本みたいに公園があって公衆便所がある訳でもない。

頑張ったよ。
俺すげえ頑張って耐えたんだよ。脂汗かきながらケツにキュッと力をこめた変な歩き方しながら早歩きで頑張って耐えたんだよ。
でも結局ウンコもらした。明らかにはみ出た。
自分が臭い。うん、間違いないねこれ。ウンコもれてます。

すっかり明るくなってから、ふいに一つの建物からキャリーカートを転がした数人が出てくるのを見かけた。あれ、宿なんじゃねえ?
やっと宿を見つけた。とてもホテルとは言えないが宿であるのは間違いなさそうだ。

レセプションにいくと、男性と女性がいた。女性はすらっとしてて結構美人だ。
値段は覚えてないが、そこまで安くなかった。けどこの際値段などどうでもいい。今ならシェラトンだってマリオットだって泊まってやるよ。一晩中歩いて疲れているし、何よりウンコをなんとかしたいんだ俺は。

パスポートを女性に渡したら、パスポートはすぐ返すからまずは男性が部屋に案内するという。
部屋は2階で、まぁまぁ広く、バス・トイレ付きだった。
バックパックをおろし、まずトイレに入った。
パンツを確認すると、丸々1本とはいかないまでもしっかりウンコが出ている。うん、夢じゃあない。

安堵感と疲労感と情けなさが入り混じった感情でうなだれていると、部屋のドアがノックされた。
慌ててお尻を拭き、汚れたパンツは履く訳にいかないのでノーパンにズボンだけ履いてドアを開けた。

するとドアの向こうには、レセプションにいた美人の女性が鼻をつまみながら私のパスポートを持って立っていた・・・。


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