引き続き、アルメニアの首都エレバンから90km程東へ行ったところにある、ノラドゥスという町の記事です。
ここには10世紀後半から作られ始めたと言われている、ハチュカルと呼ばれる墓石がたくさん残っています。
アルメニアの魅力①<エレバンの噴水ショー>
アルメニアの魅力②<カスケード・コンプレックス>
アルメニアの魅力③<ノラドゥスで見たハチュカルアートその1>

ハチュカルはただの墓石ではなく、とても芸術性に富んだ墓石なのです。名前は刻まれておらずデザインだけが施されている。これはもうアートです。
前回もいくつか紹介しましたが、今回はその他のハチュカルアートを。

まずはこちらの一枚から。

ここに写ってるのはどれもよくあるスタンダードなデザインのハチュカル達です。見ていただくとわかると思いますが、基本的のモチーフは十字架です。世界で初めてキリスト教を国教にした国ですので。
これらを基準にして、この後の写真をご覧ください。

それでは。

少し変わったデザインのハチュカルが左右に見られます。
左と右にあるハチュカルは、別に調べたわけではありませんのでわかりませんが、かなり初期のものではないかと推察されます。
いや、私の勝手な推測ですからね。けど、他の緻密なデザインに比べ、かなりシンプルでしょ?
左のなんて線だし、右のなんて立体感は出てるけど大腿骨みたいになってる。もしくはマンガの骨付き肉の骨。
個人的には真ん中にちょこんと小さく写ってるカマボコのような奴も好きです。これだけ墓石の形からして異端児。
後ろに並んでるのはスタンダードなタイプのデザインばかりです。

ちょっとアップにして、ハチュカルアートの緻密さをご覧いただきましょう。

どれも十字架モチーフではありますが、この辺になると後期なのでしょうか、かなり気合入って彫られてます。
右の十字架は、ただの線ではなく、2本のヒモが編まれて形作られているのがわかります。辿って行ったら迷路みたいになりそう。
あと、あれですね。前回、ハチュカルには名前は刻まれていないと断言してましたけど、よく見たらこの真ん中と左のハチュカルの下部に文字が刻まれてますね。
もしかしたら名前かもしれませんね。もしくは「安らかにお眠りください」とかそんなのかもしれませんが。

おっとお、さらに立体感が増してきましたよ。

真ん中のハチュカルの十字架の下にある、丸みを帯びたくぼみがポイント高いです。ここにもちゃんと模様が刻まれてるし。
左右のハチュカルには十字架の肩のあたりにパチカみたいなのがぶら下がっています。
でも、面白いのはこの後ろにあるハチュカル達です。
まず、小さい祠みたいなとこの上に乗っかってるってだけでいい感じなのですが、この、上に乗っかってるハチュカル達の一番左には、未完成のがそのまま残っているのです。
十字架の輪郭が彫ってあるだけ。こういうのがあるとなんだか和みます。

ハチュカル達は、決して打ち捨てられてる訳ではありません。
今でも地元の方々がお墓参りに来られてます。

こうして見ると、結構デカいですね、ハチュカル達は。おばあちゃんよりも1.5~2倍ぐらいある。自分もいまびっくりしました・・・。記憶の中にある大きさよりかなり大きい・・・。
そして割れてるというか折れてるというか、破損してるのがこんなにたくさんある!まぁでも作られてから何世紀も経てばそりゃそうなりますよね。

次は変わり種。進撃の巨人風に言うと、奇行種です。
これは倒れているのでしょうが、90度回転して見てみると、墓石全体に人が一人立っているのが描かれています。
手を胸の前で交差し、おへそのあたりには風車のようなものがあり肩から頭にかけて2重になっている。
頭のあたりが2重になっているのはまるで仏画での光背のよう。きっとこれは高貴な身分の人もしくは、神をイメージして刻まれたものではないかと勝手に思っています。

最後は、私の最大のお気に入りハチュカル。このハチュカルアートはすげえです。

これはまず間違いなく後期、それもかなりアルメニアの芸術が成熟してからだと思われます。
なぜなら、他のアルメニア美術でもよく描かれるモチーフが刻まれているから。
よく見ると、十字架の左におっさんの顔に羽が生えているようなモチーフが見られますが、これがアルメニア美術ではよく描かれます。
さすがにこれが何を表しているのかまでは知りませんよ。私は研究者ではなくただの無職ですから。でも、天使的なものかと私は思っています。
にしてもこの一枚に込められたデザインがスゴイ。十字架の上には神さまらしき人物がいるし、まわりには天使的なのがいて、足元には救いを求める人のような人物が2人いる。
さらにスゴイのが、このメインの十字架を拡大してよーく見ると、イエス・キリストが磔にされているのです!これを見つけた時は鳥肌が立ちました。
十字架に磔にされたイエス・キリストが天使たちに運ばれるようにして神の御許へと召されていく・・・。おそらくはこれがこのハチュカルアートの物語。
あと関係ないだろうけど、脇の模様の間にたくさん眼があるように見えて困る・・・。両目をカッと見開いてこっちを睨みつけてきてる!ひいぃーー!

という訳で、ノラドゥスという町にある、ハチュカルと呼ばれる墓石たちに刻まれたハチュカルアートをいくつかご紹介しました。
私も全てのハチュカルを見比べていったわけではありません。私が気づかなかっただけで、もっと面白いハチュカルや緻密なデザインのがあったかもしれない。
もしアナタが訪れて見ていったらきっとお気に入りのハチュカルアートを見つける事ができるでしょう。
その時は、ぜひ私に教えてください。



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