朝。
漁村の朝は早い。
インドのオリッサ州にある小さな漁村プリーでは夜が明ける前から漁師たちが海へ出て漁をする。
女性たちや子供たちは働く父の帰りを待ち、ちゃんとお手伝いをするのだ。
すっかり威厳が地に堕ちた日本のお父さんとは違い、ここでは家族の食事の為にお金を稼いでくれる父は偉い。
早速一隻の船が漁を終えて帰ってきた。
「あ、おとーさんたちが帰ってきたー」
「ねぇねぇ今日はどうだった?たくさんお魚とれた?」
浜辺は漁をするだけではない。でっかい水洗トイレとしても使われる。
「ボクのお父さんはまだかな。」
水揚げされた魚を運ぶのは女たちの役目だ。たくさん水揚げされると女たちの足取りは軽く、まるで踊りを舞っているかのよう。
「まぁ今日も大漁じゃない、ウフフ」
「ほんと、晩ごはんはチャパティじゃなくてナンにしてあげようかしら。でもやっぱりチャパティにしといて欲しかった首飾り買っちゃおうかしら、ウフフ」
大きなタライ一杯の魚を運ぶためには手で抱えると辛いので頭の上にのっける。小さい頃からやっているのだろう、結構な重さのはずなのにそう感じさせない程に足取りは軽い。
「奥さま昨日の料理番組見た?」
「ええ見たわぁ、美味しそうなカレーだったわね」
昼。
漁村の昼は穏やか。
子供達はその辺に落ちてるゴミを使って遊ぶ。
「もしもーし、怪しいジャパニ発見。怪しいジャパニ発見。どうぞ。」
「もちもーち、怪しいジャパニ発見了解。カメラに映りに行きまちょう、どーぞー。」
どいつもこいつも鼻水垂れっぱなしでカピカピなのはなぜなんだガキども。
拭くことを知らないのか。
それとももう鼻水垂れてる感覚すら持ってないのか。
町の大通りでは今朝獲れた魚が売られている。冷蔵保存とかそういう感覚は持っていないのがいさぎよい。
ある時私はサンタナゲストハウスで同じドミトリーだった日本人数人と一緒に浜へ出てきてフリスビーをやって遊んでいた。
そしたら次から次へとチビッコたちが混ざってきてカオス状態に。
フリスビーの投げ方もロクにわからないのにとりあえず適当に投げてキャッキャキャッキャ笑っている。
おかげでうっかりフリスビーを追っかけて波打ち際へダイビングキャッチしてしまい、腰に巻いてた貴重品バッグが水浸しになってしまった事があった。
そして後で宿でベッドの上にパスポートもキャッシュカードも全部出して乾かす羽目になった。
でもこうやって現地の子供達と遊んだあとはいつも妙に清々しい気分になるのはなぜだろう。
夜。
漁村の夜は早い。
明日また早朝から漁に出るために早く寝なければならない。
しかしサンタナゲストハウスだけは別だ。夜遅くなってもどこかしらで誰かキャッキャキャッキャ遊んでいる。
まるで法律などないかのように無法地帯。
<2020年追記>
現在のサンタナはもう無法地帯ではなくなっていました。
→プリーのサンタナゲストハウスが変わってた!
そうして今夜また小さな漁村プリーの一日は終わり、同じような一日がまた始まる。
プリーのサンタナゲストハウスが変わってた!
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