聖地バラナシを聖地たらしめているのは、マニカルニカ・ガートというガートの存在だ。
今回は、そのマニカルニカ・ガートについて。

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前回までの記事で述べたように、バラナシには各地からたっくさんのインド人達が巡礼の為に訪れる。しかも、家族総出とかで。

なぜガンジス河がそこまで神聖視されるのかはインド人(主にヒンドゥー教徒)の死生観が根底に流れている。

宗教的な意識が薄い日本人でさえ、死生観はほぼ共通の定まったイメージがある。
例えば「死ぬときは三途の川を渡る」といったようなイメージだ。

不思議なことに、ヒンドゥー教徒の場合も川が関わっている。
聖なる河ガンジス河(ガンガー)で死に、ガンジス河沿いで遺体を火葬してもらい、遺灰をガンジス河に流してもらったら天国に行く事ができ、この生き死にの輪廻から解脱できると信じられているのだ。

そして、その遺体を焼いてもらう火葬場こそがマニカルニカ・ガートなのである。(細かく言うとハリシュチャンドラ・ガートって火葬場がもう一か所あるけど)

マニカルニカ・ガートでは常に遺体が火葬されている。
火葬される前に、遺体は鮮やかなオレンジ色の布でくるまれ、竹で組まれた担架のようなものに乗せられ、周りに花などで彩られ、男たちによって担がれてガート付近の路地を巡る最期の旅路に出る。

マニカルニカ・ガートには遺族の人達だけではなく、ただの野次馬根性で来る外国人観光客もたくさん集まっている。
悲しみに暮れ泣いている遺族もいるので、マニカルニカ・ガートでの写真撮影は禁止されているのだが、外国人観光客の中には平気で写真を撮る奴がいてトラブルになってしまう事がある。

なお、赤ん坊や事故死した子供や妊婦などの遺体は火葬される事なくガンジス河に流されるという。
天寿を全うしていないので解脱するわけにもいかないという意識からであろうか。

動物も同じ。
バラナシのガートには野良犬や野良牛がいるのだが、それらが死んだ場合もそのままガンジス河に流される。

上の写真では流された牛が浅瀬にひっかかって半身が水面から出てしまっていて、柔らかい部分をカラスにつつかれている様子がわかる。
牛の皮膚は既に腐り、骨が露わになっている。

私は、死んだ野良犬がインド人二人の手によって、せーので河に放り投げられたのを見た事もある。
「うわぁ雑ぅ・・・」と野良犬が可哀そうに思った。

でもインド人の感覚からしたら、牛が河底にひっかかってカラスにつつかれようが、犬が放り投げられようが、聖なる河ガンガーに流れていけるのだから幸福な事だと感じるかもしれない。

遠目から見たマニカルニカ・ガートの様子。

もうもうと立ち上る煙は、望み叶ってバラナシで火葬してもらえてガンジス河に流される事のできる幸運な人達が現世に遺した最後の痕跡だ。

周りには家族やこのマニカルニカ・ガートでひっきりなしに続けて火葬を行う職人たちの姿が見える。

バラナシには、通称「死を待つ人々の家」という場所がある。
マザー・テレサが1952年にコルカタ(カルカッタ)に設立した、貧困や病気で死にそうになっている人々を看病し、最期を看取る為の施設をそう呼ぶ。
人々は、そこでガンジス河に流される時を、死を待ちながら人生最後の時間を過ごす。

コルカタのもそうだが、バラナシの「死を待つ人々の家」でも希望すればボランティアとして手伝いをする事ができる。
私も2001年に少しだけボランティアした。ほんとに少しだけだけど。

バラナシにいると、生と死について半ば強制的に考えさせられる。

マニカルニカ・ガートのちょっと下流のあたりの水面の様子。

遺体に添えられていた花や遺灰そのものやゴミや何かの破片や油やその他ありとあらゆるものが河に流されている。

これがもし日本の河の風景だったら100%間違いなくどっからどう見ても「不衛生」だの「水質汚染」だの「汚い」だの「政治が悪い」だの叫ばれるんだろうが、ガンジス河は何を流されても受け入れてきた聖なる河なのでこれが当たり前なのだ。

ゴミ。遺体。祈り。貧困。輪廻転生。病気。花。生と死。混沌。ここでは一切が流れていく。

次回はバラナシで毎晩行われるプージャというお祈りの行事についてです。


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